Fibered Sumの構成における「同値関係」続き
昨日の続き。
昨日は、「生成」される同値関係なんて概念でお茶を濁したけれど、実はきちんと同値関係は確定する、というお話。
今回は完全に集合論の枠内に収まる...はず。
あるいは、僕が圏論だと思って喜んでいても、実は集合論の手の平の上で踊っているだけなのかも?
数学基礎論的なことは、良くわかりません。
Diag.1 |
以下、常に上のDiag.1を参照することにする。
本稿の目標は、前回のややインチキ臭い同値関係をもう少し具体的な形に書きなおすこと。
具体的には、商による上の類別を集合として決定する。
準備
まずは記号の準備から。
をの冪集合とし、写像を次で定める。
これらに対して、集合論の基本的なことから、次の事実が成立することが容易に確かめられる。
FACT 1
とおく。
の個の合成をそれぞれと書くことにし、また、とする。
任意のに対して、FACT 1より、集合列はともに単調増加でありかつ、
であるから従って、
とおくことができる。
特に、一点集合について、と書く。
実は、この全体が、の上の類別を与えるのに重要な役割を果たす。
についてのいくつかの考察
一点集合に対してを繰り返し適用した極限がなのであるが、の元とはどのような関係になっているのか、定義だけからでは、直ちにはわからない。
しかし、は実は次のような良い性質を持っている。
ASSERTION 1
について
(証明)
についての数学的帰納法で示す。
の時は、仮定はを意味するから明らか。
の時は、
として示される。
以下の自然数について、ASSERTION 1が成立していたと仮定する。
ならば、FACT 1-(5)より
なので、あるがあって、とできる。
すると、の場合及び帰納法の仮定より、であり、
として、ASSERTIONのが示せる。
同様にしてASSERTIONのも示せる。
(証明終)
を繰り返し適用して得られる集合列は、互いに包含しあいながら増加していき、共通の極限が得られるのだった。
従って、ASSERTION 1から自然に次が導かれる。
ASSERTION 2
- はの類別
- はの類別
- はの類別
(証明:(1))
ならばであることを示せば良い。
とすると、の定義より、十分大きなをとれば、とでき、
∴
一方上の時、ASSERTION 1から、であり、
∴
よってで、はの類別である。
(証明:(2))
ならば、
∴
ところが、なので、
よって、はの類別である。
(証明:(3))
(2)の証明と同様。
(証明終)
前回の同値関係との関係
ASSERTION 2によって、の次の類別が得られる。
の補集合上の一点集合全てを付加することで、上の類別をの類別へ拡張することができる。
実は、この類別から定まる同値関係と前回上に定めた同値関係は等しい。
この事実の証明のために、この類別は次のような良い性質を持つことを示す。
(証明)
に対して、
(∵FACT 1-(2))
(∵図の可換性)
(∵FACT 1-(2))
従って、
(証明終)
ASSERTION 3の図式において、はfibered sumでなくとも良い。
この図式で、から誘導される写像を考えると、ASSERTION 3より
は各類上で定数であることがわかる。
従って、がの類別による商空間からへの写像を自然に誘導し、これは、fibered sumのuniversal propertyに他ならない。
特に、次が言える。
ASSERTION 4
をによって生成される上の同値関係、を上で定めた類別とする。
この時、についてであるための必要十分条件は、がある共通のに属すこと。
(証明:必要性)
任意のについて、であるから、がで「生成されている」ということより、
である。
(証明:十分性)
、を自然な商写像で、を包含写像とする。
としてASSERTION 3を適用すると、ASSERTION 3の直後の議論より、は各上定数である。
従って、
(証明終)