有界集合からの等距離膜:凸閉の場合

おなかがすいて何も考えられなくなったのでメモを残しとこう - junologyの日記で提示した命題の証明をする。
命題を再掲する(やや改変)。

命題1
A\subset\mathbb{R}^nは、原点中心、半径rn次元球B^nの内部に含まれるとする。
この時
S_A = \left\{ x\in\mathbb{R}^n\,\mid\, d(x,A) = r \right\}
は、n-1次元球面S^{n-1}と同相である。

今回は特別な場合として、Aが凸な閉集合である場合について証明する。

次の記事は既読と仮定します。
[1]集合からの距離の連続性 - junologyの日記
[2]ユークリッド空間の凸集合からの距離ネタ帳 - junologyの日記
閉集合A\subset\mathbb{R}^nに対し、p_A[2]で定めたものとし、また、次の記号を導入する。

  • [tex:B_r(A)=\left\{x\in\mathbb{R}^n\,\mid\, d(x,A)
  • \bar{B}_r(A)=\left\{x\in\mathbb{R}^n\,\mid\, d(x,A)\le r\right\}
  • S_r(A)=\left\{x\in\mathbb{R}^n\,\mid\, d(x,A)=r\right\}

特に、r=1の時には添字は省略する。
また、C\subset\mathbb{R}^nの閉包、開核、境界をそれぞれ\mathrm{Cl}\,C,\,\mathrm{Int}\,C,\,\mathrm{Bd}\,Cと書く。

B,\bar{B},Sの位相的関係

定義から、次のことが予想できる。

補題2
A\subset\mathbb{R}^nをコンパクト凸集合とする時、任意のr>0で次が成立。

  1. \bar{B}_r(A)はコンパクト凸集合
  2. \bar{B}_r(A)の内部、境界はそれぞれ、B_r(A)S_r(A)

(証明:1)
[1]-命題1より\bar{B}_r(A)閉集合連続写像による逆像なので、閉。
Aが有界ならば、\bar{B}_r(A)も有界。
よって、\bar{B}_r(A)\mathbb{R}^n有界閉集合なので、コンパクト。

\bar{B}_r(A)が凸であることを示す。
[tex:x,y\in\bar{B}_r(A),\, 0 [tex:A]は凸なので、[tex:(1-t)p_A(x) + t p_A(y)\in A]であるが、
[tex:\left\| \left((1-t)x+ty\right)-\left((1-t)p_A(x)+tp_A(y)\right)\right\|\le (1-t)||x-p_A(x)||+t ||y-p_A(y)||\le r]
∴ [tex:(1-t)x+ty\in\bar{B}_r(A)]
よって、[tex:\bar{B}_r(A)]は凸

(証明:2)
[tex:B_r(A)]は[tex:\bar{B}_r(A)]に含まれる開集合なので、[tex:B_r(A)\subset\mathrm{Int}\,\bar{B}_r(A)].
逆に、[tex:x\in\mathrm{Int}\bar{B}_r(A)]とすると、十分小さな[tex:\varepsilon>0]に対してB_{\varepsilon}(x)\subset\bar{B}_r(A)とできる。
今、t>0を十分小さく取って、y=-tp_A(x)+(1+t)x\in B_{\varepsilon}(x)であるようにする。
すると、[2]-命題4より、p_A(y)=p_A(x)であり、
d(y,A)=\left\|y-p_A(y)\right\|=\left\|y-p_A(x)\right\|=(1+t)\left\|x-p_A(x)\right\|=(1+t)d(x,A)
ところが、y\in\bar{B}_r(A)なので、d(y,A)\le rであり
d(x,A)\le\frac{r}{1+t} < r
\therefore\, x\in B_r(A)
よって、B_r(A)\supset\mathrm{Int}\,\bar{B}_r(A)であり、以上よりB_r(A)=\mathrm{Int}\,\bar{B}_r(A)
また、\bar{B}_r(A)=B_r(A)\amalg S_r(A)なので、\bar{B}_r(A)閉集合であることに注意して
\mathrm{Bd}\,\bar{B}_r(A)=\bar{B}_r(A)\setminus\mathrm{Int}\,B_r(A)=S_r(A)
(証明終)

当たり前に見えて、意外と面倒臭い。
特に、証明中に\mathbb{R}^nがノルム空間だと仮定しているあたりが、イマイチ。
単純な距離構造だけでは証明できないのか?
凸の概念が線形構造を仮定するから、無理か。

命題1の証明:凸閉の場合

では、A\subset\mathbb{R}^nが有界凸閉集合の時について、命題1を示す。
補題1より、\bar{B}_r(A)は、開核が空でなくS_r(A)を境界に持つ凸閉集合である。
そして、一般に次の命題が知られている。

命題3
U\subset\mathbb{R}^nは凸開集合で、コンパクトな閉包を持つと仮定する。
この時、同相写像\varphi:\mathrm{Cl}(U)\to \bar{B}(0)で、\varphi(\mathrm{Bd}\,U)=S(0)であるものが存在する。

(証明)
平行移動によって、Uは原点を含むとして良い。

まず、\varphi:\mathrm{Bd}\, U\to S(0)を次で定める。
\varphi(u)=\frac{u}{||u||}
\varphi全単射であることを示す。
任意のv\in S(0)に対して、Uが有界であることから
u=\left(\sup\{t>0\,\mid\,tv\in u\}\right)v
が存在し、u\in\mathrm{Bd}\, Uであり、明らかに\varphi(u)=vである。
よって[tex\varphi]は全射
一方、\varphi(u)=\varphi(u')と仮定する。
もしも、u\neq u'ならば||u||\neq ||u'||でなければならず、特に||u||>||u'||と仮定して良い。
この時t=||u'||/||u||とおけば、[tex:0