稠密な有理数に働いてもらう
数学科の講義で集合の濃度の話をやると、が可算濃度ですよっていうのは必ずやる。
また、位相を習う時に、の中でのの稠密性もやる。
従って、が可分というのは、数学科の人間なら誰でも知っていることなのだけれど、このことは、色々な反例を構成するのに、もの凄く重宝することを最近知った。
という訳で、有理数を使った変な反例をメモ。
以下、とおく。
上線形独立な連続濃度のの部分集合
(参考:linear algebra - explicit big linearly independent sets - MathOverflow)
まず、反例の構成に必要になる評価式から。
補題1
(証明)
を自然数とするとき
よって、
(証明終)
結構速いオーダーで収束するので、もしかしたら自明なのかも。(計算違いがあり、修正しました:2012/09/15)
この評価式が次の例が反例であることを示すのに使われる。
命題2
を次で定める。
すると、は上線形独立。
(証明)
とし、に対し
であったと仮定する。
特に、両辺に適当な整数をかけて、として良い。
を十分大きくとって、次を満すようにする。
すると、
の左辺について、
従って(*)が満たされるためには次が成立していることが必要かつ十分である。
すると、の仮定より、
なので、
右辺はの倍数だが、[tex:|\lambda_0|
Euclid 空間上で Stone 空間
(参考:Totally Disconnected Compact Set with Positive Measure)
最近 Stone 空間というものを知った(Stone's representation theorem for Boolean algebras - Wikipedia, the free encyclopedia)。
定義
Stone 空間とは、コンパクト完全不連結空間のこと
完全不連結といえば、真っ先に思いつくのが有理数体だが、勿論これはコンパクトではない。
僕の頭の中には、完全不連結空間なんて、離散空間かくらいしか無いものだから、じゃあ、Stone 空間というのは有限集合なのだな、などと早合点してしまったのだけれど、冷静に考えてそんなことはない。
その反例を作るために、まずは次の命題から。
命題3
位相空間は第二可算公理を満たすとする。
の部分空間が離散空間ならば、は高々可算濃度。
(証明)
をの可算な開基とする。
は離散空間なので、各点に対しを適当に選ぶと、
とでき、これによって写像を定めることができる。
に対して、ならば
よって、は単射で、
(証明終)
系4
上 Lebesgue 測度が正の部分集合は、相対位相で離散空間でない。
これらのことを知っていれば、離散空間でない Stone 空間を構成するのは、そんなに難しくはない。
とおく。
この時、を単位閉区間とし、とおくと、は Stone 空間である。
実際、は開集合なので、はコンパクト空間の閉集合よりコンパクト。
さらに、完全不連結空間の部分空間として、完全不連結でもある。
一方、を上の Lebesgue 測度とすると、
よって、系4より、は離散空間ではない。