素数の平方根を付け加える話

引き続き学部時代のメモ放出。
体論の演習で話題になった命題を証明したやつ。

命題
a_1,a_2,\dots,a_n\in\mathbb{N} は、全て互いの素な2以上の自然数で、各  a_i は平方因子を持たないとする。
この時、\mathbb{Q}(\sqrt{a_1},\sqrt{a_2},\dots,\sqrt{a_n})/\mathbb{Q}2^n 次拡大である。

(証明)
n に関する数学的帰納法で示す。
n=1 の時は、a_1 が平方因子を持たないという仮定から明らかである。
n \le k について命題が真であったと仮定し、n=k+1 の時に命題が成立することを示す。
そのためには、L=\mathbb{Q}(\sqrt{a_1},\dots,\sqrt{a_k}) とおいて、L(\sqrt{a_{k+1}})/L が2次拡大であること、すなわち \sqrt{a_{k+1}}\notin L であることを示せば良い。
\sqrt{a_{k+1}}\in L と仮定して矛盾を導く。
L'=\mathbb{Q}(\sqrt{a_1},\dots,\sqrt{a_{k-1}}) とおく(従って、L=L'(\sqrt{a_k}) である)。
帰納法の仮定より、\sqrt{a_{k+1}}\notin L' であるから、\sqrt{a_{k+1}}\in L ならば、ある \alpha,\beta\in L' によって、

\sqrt{a_{k+1}} = \alpha + \beta\sqrt{a_k}

と書ける。
これより、次式が得られる。

a_{k+1} + \alpha^2 - 2\alpha\sqrt{a_{k+1}} - \beta^2a_k = 0

\sqrt{a_{k+1}}\notin L' より、\{1,\sqrt{a_{k+1}}\}L' 上線形独立なので、上式が成立するためには、特に \alpha=0 でなければならず、よって \sqrt{a_{k+1}}=\beta\sqrt{a_k} である。
従って \sqrt{a_ka_{k+1}}=\beta a_k\in L'.
ところが、a_1,\,\dots\,,\,a_{k-1},\,a_ka_{k+1} は、命題の仮定を満たすので、これは帰納法の仮定に反する。
(証明終わり)

これを用いて何が言えるかといえば、次が言える。

系1
素数列 p_1,\dots,p_n,\dots に関して、L_n = \mathbb{Q}(\sqrt{p_1},\dots,\sqrt{p_n}) とおくと、L_n/\mathbb{Q}2^n 次拡大.

系2
\mathbb{Q} の代数閉包を \bar{\mathbb{Q}} とすると、\bar{\mathbb{Q}}/\mathbb{Q} は無限次拡大.

演習で話題になったきっかけは、この系2が言いたかったらしい。
もっとも、系2だけならば、\mathbb{Q} に原始p乗根を加えていくだけで良い。