コンパクト距離空間の親玉

今セミナーやっていて度々記事に出てくる[St]*1に、またしても未知なる面白いことが書いてあったので、メモ。

以下ではI=[0,1]を単位区間とし、I^{\mathbb{N}}にはIの通常の位相による直積位相を入れるものとする。
Iは通常の距離によって距離空間だと思え、従って、I^{\mathbb{N}}は距離化可能空間である。

さて、目標は次の命題

命題

任意のコンパクト距離空間(Y,d)に対して、同相写像\phi:Y\to \phi(Y)\subset I^{\mathbb{N}}がある。

この証明のため、基本的な補題を一つ用意。

補題

コンパクト距離空間は可分

(証明)
(Y,d)をコンパクト距離空間とする。
Yはコンパクトであることから、各自然数n\in\mathbb{N}に対して、有限集合A_n\subset Yが存在し、
Y=\bigcup_{a\in A_n} B(\frac{1}{n},a)
とできる。
A=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_n
とおく。
明らかにA可算集合であるが、さらにY上稠密である。
実際、任意のy\in Y\varepsilon>0に対し、n\in\mathbb{N}n>1/\varepsilonであるように取れば、
y\in\bigcup_{a\in A_n} B(\frac{1}{n},a)
なので、a\in A_nが存在しd(y,a)<1/n<\varepsilon、すなわちa\in B(y,\varepsilon)である。
よって、このようなA\subset Yの存在によりYは可分。
(証明終)

(命題の証明)
点列\{y_n\}\subset YY上稠密であるように取る。
Yがコンパクトであることから、M_n=\sup_{y\in Y}d(y_n,y)<\fintyが存在する。
ここで、
\phi_n:Y\ni y\mapsto \frac{d(y_n,y)}{M_n}\in I
\phi:Y\ni y\mapsto \left(\phi_n(y)\right)_{n=1}^{\infty}\in \phi(Y)\subset I^{\mathbb{N}}
とおく。

定義から明らかに\phiは連続である。
さらに、\phiは単射である。
実際、d(y,y')=r>0ならば、\{y_n\}の稠密性より、n\in\mathbb{N}があって、[tex:d(y_n,y) [tex:d(y',y_n)\ge d(y,y')-d(y_n,y)>r/2>d(y_n,y)]
従って\phi_n(y)\neq\phi_n(y')であり、\phi(y)\neq\phi(y')が得られる。

仮定からYはコンパクトであり、I^{\mathbb{N}}はHausdorffであるから\phi(Y)もHausdorffである。
従って、\phiはコンパクト空間からHausdorff空間への連続な全単射であるから、同相写像である。
よって、\phiが求める写像である。
(証明終)

つまり、任意のコンパクト距離空間は、単位区間上の点列の全体に、各点収束の位相を入れたものの部分空間だと思える訳ね。
ちょっとすごいと思った。
ただ惜しいのは、I^{\mathbb{N}}がコンパクトではないこと。
可分ではあるのだけれどね。
実際
(I\cap\mathbb{Q})^{\bigoplus\mathbb{N}}
I^{\mathbb{N}}中に稠密にある。

それから、議論の最後でコンパクト空間からHausdorff空間への連続写像は閉写像であるという事実を使っているので、「コンパクト」の仮定ははずせない。
実際、2^{\mathbb{R}}に離散位相を入れたものは距離空間だけれど、勿論(濃度の比較から)I^{\mathbb{N}}への同相な埋め込みなんて存在しない。

*1:[St] Steenrod, N., "The Topology of Fibre Bundles", Princeton University Press, 1951